レモンな初恋





 ……。



 突然腕を引かれたことと、その力があまりにも強いことに驚いたあたしは、黙って坂野くんについて行った。



 そして、着いたのは……



「……中庭?」



 春らしく、黄緑色の鮮やかに彩られている木々。


 桜はもう散りかけだけど、それに代わって赤や黄色のチューリップが可愛く咲いている。


 小さい花。スズメの鳴き声。クローバー。心地よい風。


 あとは、雲一つない、絵の具で塗ったような、真っ青に染まった青空。


 けれど、何故かこの気持ち良い風が怖く感じる。


「……」


 坂野くんは喋らない。



「あの、坂野くん……」


 坂野くんは、あたしの手こそ離してくれたものの、俯いてしまっていて顔が分からない。



 怒ってる?睨んでる?


 きっとすごく怖い顔してるんだろうな。


 ……あたしのせいか。


 多分、きっと、いや、絶対。



 まあ、もともと分かってたんだけど。


 ってか、なんで何にも言ってくれないの?


 罵倒してもいいから、怒鳴ってでもいいから喋ってほしい。