『じゃあ、8時に近くの海岸で』



 架樹に言われた通り、8時前に俺は海岸へと向かった。



 頭の中で、架樹のことばかりを考えていた。

 普通は、母親のことなんだろうけど。



『どうにかしてあげたいって、笑ってほしいって思っちゃうんだよ!』


『許せないのなら、ムカつくのなら、言えばいい。』


『お母さんに、会ってよ。お願いだから……』




 ぐるぐるとリピートされる言葉。


 架樹は泣きながら怒ってた。


 どんだけ想ってくれてるか、痛いほど分かった。



 それに……架樹はお母さんを亡くしてたんだ。



『あたしみたいに、願っても会えないのとは違うじゃん!』


 その言葉には、お母さんへの愛で詰まっていた。



 あぁ、会いたいんだなって。

 俺も、会わないとなって思った。



 確かに、ずっと強がって生きていたけど、きっと心の中では母さんに会いたかったんだと思う。



 母さんも、もしも架樹に言ったことが本当だったら……


『悪いことした……謝りたいって言ってた』


 俺に、いや家族に会いたかったんだろうな。