レモンな初恋




 消えろとか酷い!


 ってか、言ってよ。


「何書いてたのー?」


 男子が坂野くんの肩を掴んだ。



「喋ってよ!」



 気が動転してて、メガネを取ってしまった。



「……」



 あ。



 つい、だ。


 つい、やっちゃった。



 メガネを取ると、カッコ良さが際立った。


 けど、男子にも佑香にも背を向けていて、更に俯いているから、顔はあたしにしか見えなかった。



「……返せ」


 小さくて、あたしにしか聞こえなかったけれど、怒っているのはよく分かった。



「ご、ごめん」



「……」



 メガネを渡すと、坂野くんはメガネをかけて椅子から立ち上がった。


 みんながギョッとする。

 坂野くんの肩に手を置いていた男子も振り払われたようで、固まっていた。

 けれど、もっと驚くことが。


 坂野くんは強くあたしの腕を掴むと、引っ張って教室を出て行ったのだ。