レモンな初恋






 佑香があたしの渡したタオルで汗を拭きながら言った。



「うーん、あたしは会ってない」



 そう、連也くんはまだ来ていないのだ。


 さっきメールをしたら、「昼から行く」と返ってきた。



「ふーん、架樹置いて何してんのかねー?」




 連也くんが来ないのが少し寂しいな……



「……」



 俯くあたしを見て、佑香はため息を吐いた。



「もうっ、連也くんは昼から来るんでしょっ!大丈夫、まだ間に合うよ」


「……かなぁ」






 この学校にはジンクスがある。



 体育祭が終わったあと、屋上でお互いの付けていたはちまきを交換すると、その愛は永遠となるというもの。


 カップルは必ずと言っていいほどそれをして、片想いならはちまきを渡して告白するのだ。




 もちろん、あたしもしたいなって思っている。


 けれど、連也くんが来ないなら……



 佑香に励まされても、落ち込んでいるあたし。