「……え、もしかしてキス……」


「初めてだもーーーんっ!」



 もう、嫌だよ……


「あたし、言うなって言われたら言わないもん!」


 もしも口止め料だったら、いらないよ。


「……わりぃ。」


 そう言うと、あたしの隣にしゃがみこんだ坂野くん。


「うぅ……」


「ごめん」


 坂野くんは謝ってから、あたしを起き上がらせて抱きしめた。



「……え」


 温かいものに優しく包まれる。


 何故か懐かしく感じた。


 坂野くんのせいなのに、坂野くんのおかげで、不思議と悲しみが消えた。



 ……坂野くんって何者なんだろう。



 だって、あたしの知ってた坂野くんは、〔地味〕。


 そして、さっき知った坂野くんは、〔イケメンで、ちょっと意地悪〕。


 でも、あたしが泣いたら優しくて。



 ……どれが君?



 うーん……でも、


「なんか、あたしは坂野くんと仲良くできそう!」