あたし以外のみんなは、入ってきたのが連也くんだと知って視線を外した。
一瞬連也くんは不思議そうにしたけど、普通に教室に入ってきた。
しかし、連也くんも教室の静かな雰囲気と、あたしに降り注がれる視線に気づいたようだ。
あたしが連也くんを見つめていると、連也くんもあたしを見てきた。
「架樹」
いきなり佑香に名前を呼ばれてハッとしたあたしは、慌てて連也くんから視線を外した。
「ねぇ、教えてよ。なにがあったの?あれは誰なの?」
「っ……あれ、は……」
誰だろう?なんて茶化せる雰囲気じゃない。
でも、家族とも言えない。
もちろん、連也くんとも言えない。
「あれは……」
呪文のように唱えたって意味が無い。
確実に言い訳は通用しない。
クラスのみんななら未だしも、佑香には。
そんなあたしに痺れを切らしたのは、佑香じゃなくて、男子だった。
「おい、宮下ー!誰かぐらい言えよ」
「そーだそーだ」
「なあ?坂野もそう思うよな?」


