しかし、すぐに温かさがなくなる。


 と同時に、坂野くんがあたしからどいた。



 なにが起こったか、理解できて、理解できないあたしは、口をパクパクしている。


 そんなあたしを見ると、自分の唇を袖で拭う坂野くん。


「あーあ、最悪」


 そう言いながら、坂野くんはあたしの隣にある鞄を持つ。



「……」


 今のって……


 〝キス〟?


「あっ……」



 ファーストキス。


 あたしの大事な大事な、初めて。



 涙が出てきて、腕で目を隠した。



 流れる涙が、唇についた。


「じゃあ……って、なんで泣いてんだよ」


 坂野くんは、驚いていた。


「さ、かのくんの、せっ、いだも、ん……」


 みんなの言うとおりだった。


 ……酸っぱい。



 〝ファーストキスは、レモンの味〟