『……月詠朔夜(ツキヨミ サクヤ)女』


女の子「え…?」


『……名前と性別』





私がぼんやりしていると、その人は脈絡もなく呟いた。

はじめそれに反応できなかった私は間抜けた声をあげてしまった。



すると、その人は簡潔に名前と性別を教えてくれたことがわかった。
その人の名前は月詠朔夜さんと言うらしい。





女の子「あっ、私は!神崎美優(カンザキ ミユ)です!あの!助けて頂いてありがとうございました!もうダメ…かなって、思ってて……っ、」





それがわかった私はいそいで、自分の名前を言い、助けてもらったことにお礼を言った。


その際遅れてやってきた恐怖に声が少し震えた。

















『……ん。もう我慢しなくていい。』

美「えっ…?」

『頑張ったから泣いていい。』



月詠さんは私のお礼に対して短く返し、私の声の震えから恐怖を感じとったらしく労りの声をかけてくれた。










美「あはは……、泣かなくても、だいじょ…うぶ……っ、ヒック、うぅー」

『………(ナデナデ)…おいで。』





その労りに対して少し強がってみたが、思いの外我慢できなくて遂に泣いてしまった。


そんな私の頭に月詠さんの普通の人より少し低めの体温である手が置かれ優しく数回撫でられた。



その後、月詠さんはおもむろに両手を広げ私に‘‘おいで’’と呟いた。































美「っ!」
ギュウ―…

『ん。(ポンポン)』





私は思わず月詠さんの首に腕を回し肩口に顔を埋めた。


月詠さんはそれを軽々受け止めて私の身体を抱き上げ立ち上がった。そして落ち着かせるために私の背中を優しくポンポンと撫でてくれた。




月詠さんの腕の中は暖かくて優しい匂いがした
。すごく落ち着く。














『…………とりあえずここから出る。』


美「あ、はい!あの!私歩きます!」
『問題ない。このまま行く。掴まってて』




そんなことを考えていると月詠さんはこの路地裏を出ることを伝えてきた。
それに対して私も同意し自分で歩くことを伝えた。


しかしその言葉を一刀両断した月詠さんは静かに光の方へ歩きだした。