春。新しい生活。新しいスタート地点。
中1になったばっかの綿貫澪奈はうつむいて初登校。周りは新鮮すぎてシャイちゃんな澪奈はついていけない。
いつもついていけない。
小さい頃からずっとこの調子。最近やっと会話できるようになった。前は「うん」と「ううん」しか言えなかった。

学校に行く道がとちゅうで別れた。ど真ん中に立って澪奈は焦った。
『どっちに行けばいいの?』目が訴えた。周りの人が通り過ぎて行く。『遅刻したらどうしよう!』

「こっちだよ!」まっすぐみたら、同い年らしき子達に呼ばれてた。ホッとして澪奈はその子たちについてった。

穴があったら入りたい。中学受験前に覚えたことわざが頭をよぎる。

助けられた子たちと同じクラス。ホッとする。

トコトコついてって教室に上がった。もう生徒がいっぱい来てる。出席番号順で女子の最後だった。後ろの席には男子がいる。隣はタ行の女子。

澪奈は席についてうつむいた。

周りはざわつきみんな知り合い探したりプロフィール帳交換してた。

『あたしも交換しよっかな。お母さんにもらったし。でもあの輪に入れないよ。』

澪奈はいつだって話しかけるよりも話しかけられたい派。待ってる。それだけ。

先生が来た。優しそうなおじさん先生。

「はい、席についてー!」声は上下ない眠くなりそうな声。名前を黒板に書く。

「相田 太一」

「はい、じゃあ出席確認します。」めんどくさそうに言う。

みんな呼ばれる。

『怖い。言いたくない。怖い。やだ。』

「えー、綿貫澪奈さん?」

澪奈はハッとして

「はい。」と答えた。声が小さい。教室はシーンとする。先生が出席簿に何か書く。男子が呼ばれる。澪奈はホッとする。

「これから始業式をはじめます。」放送で女子放送部のはっきりした声。

立ったり座ったり。

始業式が終わる。

一日が終わる。帰れる。

澪奈はホッとする。緊張感がとれる。