そんな出来事が起きたのが1週間ほど前。

不思議なことにそれから今日まで毎日、その男子高生と会う、というよりすれ違う。

「ほう、飛鳥にもついにロマンスがやってきたか」

そのことを例の『マフラー渋い』発言をかましてくれた友達――芽以子に言ってみたら、返ってきた反応がこれである。

「んなわけあるかい」

「いやーあんた高嶺の花扱いされるくせに奥手だからさ、このまま一生恋愛せずに終わるかと冷や冷やしてたわけよ」

「ねぇ人の話聞いてる?」

「気になってるんでしょ?その彼のこと」

「そりゃまあ同じマフラーを巻いてれば嫌でも気になっちゃうでしょうよ」

「ねぇ、どんな人なの?高校は?」

そう聞かれて初めて気が付いた。

わたしは彼の外見についてしか知らない。

いや、外見についてもそこまで知らない。

ヘッドホンと紺のエナメルバッグと、全体的に柔らかくて優しい印象ってことぐらいしか具体的に出てこない。

インディゴブルーに目を引かれて、すれ違う瞬間は緊張して、わたしは彼がどんな制服を着ているのかさえ覚えていない。

イメージは頭に浮かんでるんだけど。

そう言うと「じゃあ今描いてみ?」とにこやかに返された。

「えー、無理」

「じゃあ写真」

「え」

「隠し撮ってこい」

「は」