駅のホームとインディゴブルー

会話は一定のリズムで続いていく。

「そうじゃないけど…。ねぇ誰?」

「永沼の知らない人だよ」

「わたしより…」

「うん?」

「…何でその子のことすきなの?」

思わず息を飲んだ。

聞きたいような聞きたくないような、変な感じ。

全神経が耳に集中しているかのように、わたしは意識を研ぎ澄ましてその答えを待った。

そして聞こえてきた、言葉たち。

「それは、その気持ちは俺だけの大切なものだから、彼女にしか言わない」

じんわりと、体がほぐれるような温かい何かが、わたしの中心から広がってきた。

もはや何を不安に思っていたのか、何を恐れていたのか、どうでもよくなってしまうほどの、何か。

「…じゃあ最後にこれだけ。その子と初めて会ったのは、わたしと出会うより前?後?」

「後だけど」

「そう。じゃあ振り向いてくれないのは誰のせいでもないんだ」

「どういう意味?」

「なーんか冷めちゃった。じゃあね」

「お、おう」

不思議そうな水穂くんの声とともに、再び鉄の段を踏んで歩く2つの足音が聞こえてくる。

わたしは慌てて、だけど音が立たないように気を付けて、ひとまず上の階へ避難した。

ナガヌマさんが戻ってきて、扉が開いて、閉まる。

一応誰もいないのを目で確認してから、わたしは大きく息をはいた。