駅のホームとインディゴブルー

すべり込むように、慎重に外に出て扉を閉める。

「今日、一緒に帰らない?話したいことがあるの」

ナガヌマさんも1階分くらい階段を下りているらしく、下から声が聞こえてきた。

「悪い、今日はちょっと…」

「何で?」

水穂くんがまだ言い終えないうちに、遮るようにナガヌマさんが聞いた。

学校の敷地の中でも裏手に当たるらしく、文化祭の喧騒は微かにしか聞こえてこない。

「先約があって」

一体ここで何が話されるのだろう。

「誰?」

そしてわたしがこれを聞いたところで何になるんだろう。

ただの盗み聞きじゃん。

「それ、言わなきゃダメ?」

それでもわたしは動こうという気にはならなかった。

心臓の鼓動が速くなっている。

「だって気になるんだもん。それとも言えないような人なの?」

自分の呼吸の音すら、うるさい。

「違うけど」

「じゃあ教えてよ」

一度深く呼吸をしたような間を置いてから、水穂くんは落ち着いた声ではっきりと言った。

「彼女」

わたし――

「いたの?」

「いるよ」

急に、自分から発せられていた全ての音が消えたような気がした。

どうしてなのか、固まっていくような感覚。

「いつから?」

「もうすぐで半年」

「何で教えてくれなかったの?」

「教えなきゃダメだった?」