駅のホームとインディゴブルー

何とも言えない微妙な時間が続く。

「おーい、水穂ー!そろそろ準備だってよー」

すると廊下から顔だけ覗かせた男子生徒が、水穂くんを呼んだ。

「ごめん。もう行かなきゃ」

「あ、うん」

「えーっと…ごゆっくり?」

水穂くんはなぜだか曇った表情でそう言い残して教室から出て行った。

「ありゃ何か隠してるわ」

芽以子は顎に手をついて水穂くんが出て行った出入り口をじっと見つめる。

「やっぱり…?」

「ちょっと飛鳥、あれ」

促されるままに芽以子と同じ方を見ると、ナガヌマさんが急いで教室を出て行くところだった。

これまでの数々の疑問が頭の中で錯綜する。

『来て欲しくない』、『告白でもしなさるのでしょうよ』、『入らないで!』、『メープルできました!』、『ごゆっくり?』…。

「ど、ど、どうしろと?」

「追え」

「え?」

「追、え」



芽以子に言われるがまま追いかけてきたら、ナガヌマさんは外の非常階段に通じる鉄の扉に入って行った。

使用禁止と書かれた紙が貼ってある。

ゆっくりと音をたてないように開けると、カンカンカンという階段を駆け降りる音が聞こえた。

「待って、水穂」

「お、どうした?」

ナガヌマさんと水穂くん。

そうっと覗くと、誰の姿も見えなかった。