「あ、当駅に届け出があったようですね」

「本当ですか!」

「今お持ちしますので、ご確認をお願いします」

駅員さんはそう言って奥の方へ歩いていった。

よかった。

このマフラーを見ると嫌でも思い出してしまう人がいるから、いっそのことこのまま手放してしまおうかなんて、さっき一瞬思ってしまったけれど。

でも物に罪はないんだもんね。

わたしが強くなればいい話なんだよ、これは。

もう心が揺れないように、しっかり押し込めておけば。

「こちらですが、間違いないですか?」

戻ってきた駅員さんがわたしのマフラーをカウンターにそっと置いた。

「はい!そうです」

「それはよかったです」

にっこりとされて、わたしは涙が出そうなくらい嬉しかった。

「あぁ、これ」

すると駅員さんの奥を通りかかった別の若そうな駅員さんが、こっちを見て声を発した。

わたしと中年の駅員さんが無言で顔をそちらに向けると、若い駅員さんはすぐさま話し始めた。

「このマフラー、同じようなマフラーをしてる男子高校生が昨日届けてくださったんですけどね、なんか紙も挟まってるのでそれも一緒に持ち主に渡してくださいって言ってましたよ」