それからのわたしは、彼のことを避けに避けまくった。

とりあえずあの車両にはもう乗っていない。

乗る電車自体も、いつもより一本遅い日もあれば学校で時間つぶしてから二本遅い電車に乗ったりと、ばらけさせるようにした。

それでもホームに降り立つといつも彼がいて、だからわたしは急いでマフラーを外す。

改札に行くには彼の後ろを通らなくてはいけないので、人の影に隠れて歩いてみたり、すたすたと高速で歩いてみたり、とにかく気付かれないように必死だった。

しかしなぜいつもいるんだ…!

もはや敵に思えてきたよ、ラスボス級だよ…。

でも例の彼女はあれっきり見ていない。

一緒に帰ってあげればいいのに。

そういえば映画の続編見に行ったのかな。

そう思うとちょっと落ち込む自分がいた。



ラスボス回避作戦も実に5回目に挑もうという今日。

どうせ、と言っては失礼になるけど、彼はホームにいるんだろうなと思うと気が滅入った。

彼の目的はいったい何なんだろうか。

誰かを待っているのかな…あっ。

ようやく悟ったわたしは妙に納得した気持ちになった。

ガタゴトと電車に揺られながら、ゆっくりとマフラーを外した。

彼に会えて嬉しいと思っていた少し前の自分が、より一層恥ずかしく思えた。

唇を軽く噛みしめ、目を閉じて下を向いた。

もうすぐ電車はわたしの降りる駅に着く。