待ってましたよ隣駅!

これほど電車の到着を待ちわびたことはない。

じっとしていられなくて、わたしは車内アナウンスが流れ始めた瞬間に立ち上がった。

すると手のひらの音楽プレーヤーを操作して、彼がヘッドホンを外した。

床に置いていたエナメルバッグの肩紐を手に取る。

隣の駅かよ!と心の中でツッコミを入れた。

さっきの駅から5分もたってない。

しかも乗り換え駅じゃないってことはこの近くに住んでるってことで、そうなるとわたしと地元が一緒ってことですか、そうだったんですか、へー。

極力見ないようにしてドアの前へ移動し、開くのをじっと待っていた。

早く開けて。

早くして。

はーやーくーしーてー。

彼が後ろに来た気配がした。

ドキドキする。

窓ガラスの反射で、わたしのすきなマフラーだけをそろりと見た。

クレイジーチェック。

わたし今結構クレイジーですぜ、なんて。

ドアがのろのろと開きだす。

早く逃げ出したい衝動を抑えて、平静を装って、完全に開き切ってから足を一歩前に出した。

「あの」

ドクン、と心臓がはねた。