「死ぬの?」
男はあたしの冷たい目をスルーして問い掛けてきた。
コイツは馬鹿なのか?
この状況を見て、ほとんどの奴が分かる事だろう。
ってか、今飛び降りようとした所を見ていただろ…
まぁ、男は皆、馬鹿か…
いちいち説明するのも喋るのも面倒くさい。
さっさと飛び降りてしまおう。
そう思い、いざ飛び降りようとした……
が…
「風月(かづき)」
男がポツリと呟いた。
一見男の様な名前。
普通の人ならきっと不思議そうな顔をするだろう。
だが、彼女はピクリと眉を動かし、さっきの闇に囚われた目が嘘のように獲物を射抜く鋭い目に変わった。
「お前…誰だ」
その場の空気が一瞬にして変わった。
肌に刺さるようなピリピリした空気に…
これが世に言う“殺気”なのだ。
あたしは殺気を出しながら振り返りフードの男を睨んだ。
「……」
男は黙ったまま。
「その名を何故知っている…」
《風月》はあたしの第二の名。
あたしは、世界No.1の暴走族“白虎”の総長。
仲間からは、最強女総長って言われてる。
その通り名が風月。
この名を知っていると言うことは、フードの男は族関係の奴って事だ。
でも、風月の本性は白虎の奴しか知らないし、白虎の下っ端も皆知ってる訳でもない。
性別、本名、年齢…
それらを全て知っているのは白虎の幹部以上だけ。
それなのに、この男…
「…」
あたしの問いに答えない男。
話さないつもりか…
なら、こちらから力ずくで聞き出すまでだ。