箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「思い出というのは、良いですね」

「え?」

 小さく聞こえた声に顔を上げた。

「それが、良くも悪くも記憶に残る。私にも、もちろんあります」

「ベリル──」

「今までの記録を見せて欲しいと言えば見せてはくれます。しかし、それは思い出とは言い難い」

 マークは喉を詰まらせ少年を見下ろした。

 どんな言葉も目の前の少年には軽すぎる、僕が言っていいものなど何もない。

「思い出は、いつも同じ背景です」

 困ったような笑顔を向ける。

 それは、自分の運命を受け入れている笑みだ。

 自分の境遇に悲観してるでもない、ただ自分なりに受け入れたというだけなんだ。

 この子はこの子なりに自分の出来る範囲の中で人生を楽しもうとしている。