箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

 楽譜をまとめてファイルに仕舞いピアノを閉じて歩き出す少年にマークは慌ててその後ろを追いかけた。

「珍しいですよね」

「え?」

「私という存在は」

 振り返りマークを見上げた。

 相変わらず感情の読み取れない瞳はマークにさしたる期待はしていないのだろう。

「そ、そりゃあ、まあ」

 唐突に問いかけられて思わず答える。

 ここで、「そんなこと無いよ」と言うのもマークには躊躇われた。

「あなたはいい人です」

「え?」

 意外な言葉が返されて驚くマークに少年は柔らかに笑う。