箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「どうしたの?」

「心が無いのでしょう?」

 ぼそりとつぶやいた言葉に目を見開く。

「いくら譜面通りに、指示通りに弾いたとしても、これでは人の演奏とは呼べない」

 鍵盤に指を乗せ愁いを帯びた小さな笑みを浮かべて顔を伏せる。

「ベリル……」

 この子は自分の演奏に何が足りないのか解っているんだわ。

 それでも、それを吹き込むことが出来ない。

 方法を知らない訳じゃない、感情を持たない訳じゃない。

 なのに、それを込めることが出来ないんだ。

 アリシアは、喉を詰まらせて震える手を押さえた。