「ベリル・レジデント──というのはどうだろう?」

 その言葉に研究室は一瞬ざわつき、すぐに静まりかえった。

 皆が目を見開いてベルハースを凝視したが、それから眉を寄せ視線を床に落とした。

「ふむ、悪くない」

 頭頂部が禿げた白髪の六十歳ほどの男は薄く笑ってその名前に同意した。

「サイモン教授……」

 それに促されるように他の者も頷く。

 取り囲み見下ろされる赤子は、複雑な色の視線を感じながらもただ静かに彼らと視界に映る室内を見回していた。

 薄暗い部屋の一角で、人知れずそれは誕生した。

 地球上に現存するあらゆる人種のDNAを可能な限りかき集め、研究を重ね実験を繰り返して完成した完全なる人工生命体、それを造り出す事に彼らは成功したのだ。