「君が新しい視察か」

「はい」

 青年は驚いて振り向き、五十代ほどと思われる白衣の男に「初めまして、マークです」と手を差し出した。

「ベルハースだ」

 ぶっきらぼうに発せられたその名を聞いた途端、青年は目を輝かせた。

 この研究チームのリーダーである彼を羨望の眼差しで見つめた。

 それにさして関心もなく歩き出すベルハースをマークは慌てて追いかける。

「君のような者が送られて来るとは、この研究所は店じまいかね?」

「これでも博士号を持っています」

 皮肉混じりの言葉に声色を低くした。

「ほう」

 初めて関心を示したベルハースに鼻を鳴らして本題を切り出す。