箱庭の螺旋-はこにわのらせん-


 ──ベリルは知識を吸収していき、九歳になる頃には高い大学レベルにまで達していた。

 とても九歳とは思えない大人びた言動は不思議と相応しくも感じられた。

「いいか? ベルハース。この世界は一人の支配者がいればいいんだ」

「なんだそれは」

 食堂でコーヒーを傾けていたベルハースに、ハロルドが演説気味に発した。

「あの子はまさにぴったりだとは思わんか?」

「ハッハッ! あの子は脳に関する研究でここにいるだけだよ」

 いくら古い友人とはいえ本当の事を話す訳にはいかない。

 しかし、ハロルドは興奮したように(なお)も続けた。

「この世界はすでに飽和状態だ。誰かが統治をしなければ崩壊する──」

 自分の言葉にでも酔っているのか、立ち上がり歓喜に震えながら遠ざかっていく。

 さらに熱を帯びて語っているようだが、ベルハースには聞こえなかった。