箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

 しかし、赤子を見つめる彼らの目から少しずつ喜びの光が消えていく。

 癒しの色の瞳の奥にある輝きは、成功を喜んだ者たちの心に何かを穿(うが)った。

「綺麗な瞳ね」

 十人からなる研究チームの唯一の女性が小さく笑って赤子の小さな手を指にからませた。

 赤子は母親を求めるように、年配であろう彼女の指をか弱く握る。

 事前の血液検査で全てにおいて正常であると結果が出たその赤子の性別は男性だ。

 彼女は目を細め口の端をやや吊り上げる。

「きっと聡明な子になるわ」

 赤子はまるで彼らのした事を理解しているかのように、ただ静かに見つめていた。

 数人がその瞳に耐えきれず視線を外す、それが自責の念かどうなのかは解らない。

 ベルハースは、淡々と威厳のある声を低く絞り出す。