時折たどたどしくはなるものの、その旋律は正しく奏でられていた。

 ここまでの天才少年だとはとアリシアは感嘆する。

「アリシア先生」

「え、何?」

「ここはどう弾けばいいのですか?」

「ああ、ここはね」

 指し示されている箇所を確認し、ふとベルハースの言葉を思い出す──技術よりも感情の強調を──確かに、少年に技術を教える必要はほとんどないのかもしれない。