「あ~……」

 どうしよう、この二つしか持ってきてない。

「あ、これはちょっと無理だから。別の楽譜を持って──」

「それで構いません」

 言い終わらないうちに返された言葉に苦笑いを固めた。

 目を丸くしているアリシアの手から楽譜を取って無言で見つめる。

「あの、ベリル」

 いくらなんでも初めてでこれを弾くなんて無理よ。

 アリシアの心配をよそに少年は楽譜を譜面板に置き、やや迷いながらも鍵盤を弾いた。

「え!?」

 ぎこちないけど間違ってない。