五歳か六歳だろうか、その少年はゆっくりとベルハースからアリシアに視線を移した。

「明日から君にピアノを教える人だ」

 少年はその言葉に子どもらしからぬ優雅な物腰で立ち上がり握手を求めた。

「初めまして」

「は、初めまして。アリシアよ」

 差し出された手を握り返し、金色のショートヘアを見下ろす。

 子どもにしては落ち着き払った態度に戸惑いながら、何をしていたのかと床を見やった。

「何をしていたんだね?」

「幾何学の勉強を」

「え」

 き、幾何学? こんな子供が?