箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「君は、ベリルにピアノを教えるのだな」

「え、はい」

 ベリル? 少年の名前かしら。

 アリシアは疑問に思ったがベルハースの次の言葉を待った。

「ならば、彼には技術よりも音が奏でる感情を強調して教えてやってくれないか」

「え?」

 意味がわからず聞き返したアリシアに構わず、ベルハースは一つの部屋の前に立った。

 ガラス張りのスライドドア越しに、こちらに背中を向けている子供の姿が見える。あの子が天才少年なのだろうか。

 センサーは近づくベルハースを関知してドアをスライドさせた。

「ベリル」

 そのまま床に座り込んでいる少年の元へ歩み寄り、ベルハースは若干の笑みを浮かべた。

「はい」

 丁寧に返事をして振り返った少年にアリシアは一瞬、喉を詰まらせる。

 鮮やかな緑の瞳はエメラルドのように輝き、その歳の子供とは思えない存在感を放っていた。