薄暗い部屋に設置されている丸いガラスケースには幾つもの管が取り付けられていて、その先には見慣れない機械が赤や青のランプを定期的に点滅させていた。

 元は透明だったと窺える液体は赤く染まり、己の仕事を終えたのだというように満足げにその動きを止めた。

 ガラスで作られた疑似子宮から取り出された赤子はすぐに大きくひと泣きして生を得た事を伝え、それきり沈黙する。

 小さな命から窺える反応や顔からは恐怖でも喜びでもなく、どこからも何の表情も読み取れない。

 鮮やかな緑の瞳は研究チームのリーダーであるベルハースを捉えていた。

 四十代ほどの、わずかに白髪の混じったブラウンの髪に赤茶色の瞳と白いあごひげをたくわえたベルハースはそんな赤子と見つめ合う。

「みんなで名前を決めないか?」

 おもむろに出されたベルハースの提案に一同は笑って同意した。