箱庭の螺旋-はこにわのらせん-


 ──アルカヴァリュシア・ルセタの田舎町。

 そこは湖畔にあり、景色が素晴らしい小さな町だ。

 続く石畳と煉瓦造りの家屋は晴れた空に爽やかな風を運ぶ。

「私がですか?」

「はい、お願い出来ますでしょうか」

 リビングで暗いスーツを着た男性に飲み物を出しながら、その女性は当惑した。

「二十五歳という若さでコンクールを総なめにしているその技術を是非、少年に伝授していただきたい」

「そんな……。私なんて」

 女性はおだてられて苦笑いを浮かべ肩をすくめる。

 彼女の名はアリシア、十歳にして天才ピアニストと称され今でもその腕は磨き続けられている。

 明るい栗色の髪は背中まで緩くカールされ、淡い黄色がかった瞳は魅力的だ。