陽はいっそう丘を紅(くれない)に染めて、まばらにいた人影も家路へと急ぐ。

 そよぐ風が一人佇むベリルの柔らかな髪を揺らし、その存在感を際立たせた。

 ふと、一つの石碑の前で立ち止まる。

 記されている名前に眉を寄せ、拳を強く握った。

「──ブルー」

 目頭が熱くなる。

 しかし、涙は出なかった。

 代わりに、胸が締め付けられる感覚を覚え、吐き出せない苦しみに自分の胸ぐらを掴んだ。

 微かに震える体は、今にも崩れそうに弱しく立ちつくす。

 私がいなければ、彼らは死ぬ事は無かったのだろうか。

 あのとき、私がもっと強ければ一人でも救えたのだろうか。

 過ぎ去った出来事を悔いるのは簡単だ。

 だが、それは彼らの望んだものじゃない。

 私がしなければならない事はそうじゃない。