それからベリルは、しばらく町を見て回ったあとメモに記された場所を訪れる。

 マークのいた町から車で小一時間ほどいった所にある高台に、そこはあった。

 高台とは言ったが、あまり勾配のないこの国ではの話で、低い丘あたりが妥当かもしれない。

 広大な敷地には、さほど大きくもない白い石版が整然と立ち並んでいる。

 その中に名家のものだろうか、巨大な十字架の石碑がいくつも点在していた。

 そんな墓地の一角に、他とは違う雰囲気の石碑がまとまって並んでいた。

 本来ならば、書かれているはずの没年が記されていない。

 そこにはただ質素に、生年と名前だけが刻まれていた。

 ざっと数えて三百はあるだろうか。

 それらを眺めながらゆっくりと歩みを進める。