箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「ああ、そうだ」

 マークは思い出したようにつぶやくと、メモ帳に何かを書き始めた。

 記した一枚を破き、それをベリルに手渡す。

「彼らに会いたいだろう?」

 書かれた文字に眉を寄せ、マークの言葉にベリルの目が曇る。

 メモを折り、気を取り直すようにマークを一瞥した。

「もっと早くお会いしたかったのだが」

「監視が邪魔だったろ」

「まったく」

「三十年か。長かったな」

「そう、長かった」

 交わす視線に全てが集約されたように、互いに無言で小さく頷いた。

 何十年と経とうとも癒える事のない傷なれど、それに囚われている訳にはいかない。

「この世界はどうだい?」

 その問いにベリルは窓の外に目をやり、ほんの少しだけ口角を緩めた。