箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「それで、そのクローンたちは」

「二名を残して全て死亡。その二人ももういない」

 愁いを帯びた瞳に、マークはそれ以上は訊かなかった。

 ベリルはそれらに関わり、過去の傷と新たな傷を背負ったのだろう。

 そう思うと、その傷を開くようなことはしたくなかった。

 尋ねれば、彼は「構わない」と言うだろう。

 それでも、聞く気にはなれなかった。

 解っている、これは半ば自己防衛だ。

 僕は、彼の傷を共に背負う勇気を持たない。

「今は別の意味で大変でね」

「大変?」

「何せ不死ですから」

 何度捕まったか知れないと肩をすくめる。

「ああ、それなら僕も調べてみたい」

「冗談でしょう?」

「半分、本気だ」

「言ってくれる」

 外はやや陽が傾きかけたのか、向かいの家の壁がオレンジ色を帯びた陽射しを浴びていた。