マークはふと、

「もしかして、国から要請が来たりは──」

 その問いかけに、ベリルはニヤリと口の端をつり上げてグラスを軽く掲げた。

 マークは唖然としたあと、こらえきれずに腹を抱える。

 ベリルは国自体が関係する事柄は引き受けない。

 しかし、それ以外なら場合によってどの国の要請でも了承することがある。

 例えば要人の護衛や人質救出、内戦で取り残された村人の救出などといったものだ。

「そうか、そうだよな」

 傭兵をしているなんて思いもしないよ。

 マークはひとしきり笑うと、ふいに視線を落とした。

「君が無事で、本当に良かった」

 ぼそりと発したマークを見やる。その手は微かに震えていた。

 施設の状態を見たならば、どれほど気に病んだことだろう。