「それで、その少女は?」

「さあ、今は故郷にいるかもしれない」

 彼女の一族に受け継がれていた、不死を与える力はベリルに使ったことで消え去り、彼女はもう身を隠す必要がなくなった。

 しばらくはベリルが居を構えるオーストラリアにいたようだが、今はどこにいるのか解らない。

 自身の正体と身を置く世界、そして不死──それらを考えれば、向けられる恋心には応えられなかった。

 彼女はただ、捨てられない力を継いでしまっただけの人間なのだから。

 その力も無くしたいま、きな臭い世界に巻き込むことはしたくなかった。

 少女との出会いは偶然だったのか、それとも必然だったのか──マークには必然だと思えてならなかった。

「まさか、傭兵をしているとは思わなかったよ」

「私にはそれが適正だったようでね」

 彼がそれを選んだ理由が幾つかあることは言わなくても解っていた。

 彼にとっては、早々にこの世から引退出来そうな職種だったろう。