「私ですよ、マーク」

 この口調は確かにベリルだ。

 自分に向ける眼差しもあの頃のまま──しかし、

「成長速度は常人と同じだというデータは違ったのか?」

 青年は、いつまでも落ち着かず口の中でつぶやきを繰り返すマークを見つめて小さく笑みをこぼす。

 そんな、どこか切なげで優しい眼差しにマークの記憶が一気に呼び覚まされた。

「ベリル!」

 感極まり、気がつけば青年を抱きしめていた。

 間近で見る顔立ちと表情はまさしくベリルだ。

 何十年経っていても、その瞳は変わることなく深い何かを湛えていた。

「一体、どうして」

「話せば長くなります」

 驚くのも無理はないと苦笑いを浮かべ、感情の昂ぶりで震えるマークを丁寧にソファに促した。