マークには妻がいる。

 彼の性格を知る上司は、家族を守るために必ず口をつぐむと考えている。

 もちろん妻を守るためも理由の一つだが、何よりもベリルのためが大きかった。

 彼なら、どんなことがあっても自分に接触してくることはないだろう。

 それならば、政府の目を分散させた方が彼のためにもなる。

 仕事を辞めると言ったときローラは少し驚いたあと、いつもの笑顔で夫の決断を尊重した。

 何も話さなくとも、夫が大きなものを抱えているのだと気付いていたのかもしれない。

 何も言わずに許してくれたローラに感謝しかなかった。

 そうして遺伝子関係の仕事に就くことは避けて、なるべく経歴から遠い職を選んだ。

 そのせいで苦労は絶えず、それもまた人生の良い経験となっているのだと思いたい。