──ベリルのことが気掛かりで数年は情報を監視していたマークだが、妻のためもあって辞職を決意した。

 襲撃した連中の正体は結局、解らずじまいで気にはなったけれど、このままでは何の関係もない妻を巻き込んでしまう気がした。

 精神が荒(すさ)めば妻に八つ当たりしかねない。

 それに一番、心を痛めるのはベリルだ。

 辞めるときに、今よりも高いポストを提示された。

 マークはそれに躊躇うこともなく、

「施設でのことが精神的なダメージとなっている」として拒否をした。

 返って警戒されるかもしれない理由にしてしまったとも思ったが、辞める前に上司から

「あの件については他言無用である」ことの重要性を暗に示されて多少の安心はあった。