彼らはこのために、細かなものまでまとめていたのだろうか。

「ベルハース教授!?」

 倒れている白衣の人物に駆け寄る。

 ぴくりとも動かず、その様子から死んでいるのは明らかだ。

 奮い立たせていた気持ちが一気に失せて、また吐き気が込み上がる。

 ベルハースは、ここで敵に立ちはだかったのだろう。

 無惨な姿にもどこか満足そうな口の端に、やり遂げたものが彼にはあったのだと思いを巡らせる。

 彼は無骨な人だった。

 愛情表現が下手で、自分の感情を伝えることに不器用だった。

 そして芯は硬く、決して曲げることはない。

「そうだ」

 彼はきっと、ベリルが逃げ延びることを信じていたんだ。

「そうさ。ベリルなら」

 マークはふと、ベルハースの遺体にぽつりと白いものがあることに気付いた。