「うわっ」

「なんだこりゃ」

 さすがの光景に、兵士たちの眉間にも深いしわが刻まれた。

 これではベリルが巻き込まれても不思議じゃない。

 マークは吐き気をこらえて再び重たくなった足を動かした。

 よほどでなければ入れ替わりのないこの場所において、倒れている顔のほとんどをマークは見知っている。

 転がる遺体を見る度に、会話を交わした記憶が脳裏を過ぎり何度もくじけそうになりながらベリルを探し回った。

 随分と走ったが、人の気配はまるで感じられない。

 死体の間を走り抜けていたせいか、この状況に慣れてしまっている自分に半ば呆れと悔しさが込み上がる。

 本当に誰も生き残っていない。

 ただ一人を探して回るマークに焦りが募っていく。