「ベリル!」

 救援に向かう軍のヘリに同行したマークは、施設に到着してすぐ、誰よりも先に駆け出した。

 兵士はそれを止めることもせず、遠ざかる後ろ姿を見送る。

 彼らがやる事といえば、建物の破損状況の確認と生存者がいるかどうかなのだろう。

 襲撃から二日を経過して敵がいるとは思えないためか、どこかのんびりとしていた。

「どこだ!?  返事をしてくれ!」

 足を踏み入れてすぐ、目の前に転がる死体に立ち止まり息を呑む。

 辺りを見回すと、壁には赤黒い染みに数え切れないほどの小さな穴──死体は一つだけじゃない。

 まるで、ビスケットの欠片の道しるべのように点々と転がっていた。

 ふと気がついた生臭さはこれかと口を覆う。

 こんなものは戦場とは言えない。

 ただの虐殺場だ。