だけれど、ベリルは覚えている。

 決して忘れはしないと拳を強く握りしめた。

 待っていれば、いずれ軍が来るだろう。

 それからどうなる?

 ベルハースたちがいなくなっても、また同じことが続くのだろうか。

 それとも──?

 ベリルは顔を伏せ、強く目を閉じた。

 そのあと、ふらりと施設内の庭園に足を向ける。

 それからおよそ一時間後、缶詰と飲料水にエマージェンシー・キットの入ったバックパックを背負い、えぐれた地面を再び見下ろす。

 目を眇めて瓦礫を見やり、大きく息を吸い込んで顔を上げた。

 ベリルは紡げない言葉を呑み込み、その場から静かに姿を消した。