ベルハースはベリルの反応に、そろそろ自分の事を知ってもいいかもしれないと感じた。

 思えばこの子は、自分の名前──キメラとベリル──の使い分けを誰にも教わる事なく理解していた。

「ベリル、おいで」

 両手を後ろで組みスライドドアに向かう。

 ベリルはその後ろをついて同じく部屋をあとにした。

 何も言わず、何も訊かずに追ってくる嬰児に時折、意識を向けて目的の部屋に歩く。

 国からの視察が来たとき、研究者たちは一切ベリルの名を呼ばなかった。

 少年はその事で何かを悟ったのかキメラと呼ばれても、少しもおかしな反応を示す事はなかった。

 まるで、日常でもその名で呼ばれているかのように。

 恐ろしいほどの洞察力だ。