──ベルハースは実験棟の一室、並べられたパソコンを見渡し、もしもの時にと設定していたデータの消去を行う。

 素早く消去を済ませ、部屋を出るときに扉の脇にある赤いレバーを倒した。

 すると、スプリンクラーから水の代わりに可燃性の液体が降り注ぎ、途端に炎が上がる。

 とにかく全ての部屋を破壊しなければと、ベルハースたちは重い足を引きずる。

 きっとベリルなら、ここから逃げ出せると信じて力を振り絞る。

 自由になったときにデータが残っていたら、彼をまた引き戻してしまう。

 我々がいなくなったあと、どういった実験や研究が行われるのか考えたくもない。

「もう、充分に貢献したはずだ」

 これ以上、私たちの子供を苦しめないでくれたまへ。