箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「温かい」

 そんなこと解るはずもないのにと、ベリルは震える自分の手を必死で抑えた。

 彼女の体が少しずつ冷たくなっていく。

 けれど、どうする事も出来ない。

 床に広がる赤い液体に声を詰まらせる。

 どんなに酷い映像を見せられても動揺する事がなかったベリルだが、初めて目にした光景に鼓動が速くなる。

 脈打つ傷口とあふれ出る血液は、アリシアから少しずつ体温を奪っていく。

「こんな、おばさんが……あなたに、恋するなんてね」

「まだ三十だろう?」

 頬に添えられた手を握り、安心させるように微笑む。

「三十五よ」

 アリシアは深く息を吐き目を閉じたあと、

「行って、ベリル。ここにいてはだめ」