笑われた恥ずかしさより、こんな風に笑うこともあるのだと、初めて見たベリルの様子に喜びを感じた。

 しかし、しぼんだ生地は元には戻らない。

 このまま焼けばぺったんこなスポンジが完成すると思うとアリシアはまた泣きたくなった。

「どうしよう」

「では、ケーキは止めましょうか」

「え?」

 ベリルは生地の入ったボウルを受け取り、フライパンに油を引き始めた。


 ──アリシアは、メープルシロップとバターの乗せられたホットケーキにフォークを立てる。

 不満そうにひと切れ口に運ぶが、味は最高だった。

「ケーキのはずだったのに」

 フォークを噛み、悔しげにホットケーキを見下ろす。

「どちらでも構わないでしょう。良い出来です」

「美味しいけど」

 ケーキ、作りたかったな。

 悲しげなアリシアの表情に、ベリルは小さく笑って立ち上がる。

「まだ時間はあります。作りますか?」

 その言葉にアリシアは満面の笑みを浮かべた。