「先生」

「なに?」

「泡が潰れています」

「え? ああああ!? うそ!?」

 アリシアはかさの減った生地を見て呆然とした。

 さっきまであんなにふんわりしていたのに、小麦粉を入れてしばらく混ぜていたらいつの間にかかさが減っている。

「なんで?」

「卵の泡立てが不十分だったのでしょう」

「混ぜ方の問題じゃなくて?」

「泡立てがしっかり出来ていればあまり潰れる事はありませんから」

 ちゃんと泡立てたと思ったのに、どうして彼に見せずに自分判断でやってしまったんだろうと手が震える。

「もう泡立ては無理?」

「この段階では無理ですね」

「そんなあ……」

 今にも泣きそうな顔でベリルを見上げた。

 すると、ベリルはそれにこらえきれずアリシアに背を向けて肩を震わせる。

「ク、ククク」

「ベリル!」

 アリシアは恥ずかしさで顔が赤くなった。

 もちろん、それだけではない事も心に秘めている。