箱庭の螺旋-はこにわのらせん-

「あ、そ、そうね。そうするわ」

「基本的なスポンジケーキで進めていきます。基本を覚えれば応用が利くようになります」

「うん」

 レシピ本を見てベリルの指示を受けながら進めていくが、ベリルは本も見ずに本の通りの分量をきっちり計っていた。

 ベリルの手際の良さに唖然とし、こんなものまで記憶しているんだとアリシアは改めて彼の凄さを実感した。

「先生?」

「あ、ごめんなさい」

 あまりの手際につい見とれてしまった。

 十五歳は見た目だけならほぼ成人と変わりない、ベリルの身長はすでにアリシアを越えるまでになっている。

 いつも私が見下ろしていたのに、いつの間にか見下ろされるようになっていたんだなと妙な感慨にふけった。

 そしてふと、この子は確かに天才だと思い起こし、今までそれを鼻に掛けたことが一度もないことに気がつく。

 私なんてピアノ以外、これといった事は出来ないし何も知らないと若干、自信を無くした。