箱庭の螺旋-はこにわのらせん-


 ──次の日

「私がですか?」

「うん、そう。私にケーキの作り方を教えてくれないかな」

 アリシアはベリルにお菓子作りを持ちかけた。

 仲良くなるなら作るのもいいけど、教えてもらうのもいい方法だと考えたからだ。

 ベリルはアリシアの言葉に当惑する。

 ずっと教えられる立場にあった自分が誰かを教えるなど、今までになかったことだ。

「先生は」

「何?」

「お幾つでしたか」

「……」

 その問いかけにアリシアはこめかみの血管を若干、浮かせた。

 それはあれかな、三十五歳にもなってケーキも作れない私を笑っているのかな。

 それとも、いい大人が十も下の子供に教わることがおかしいのかしら。

 そんなアリシアを見つめてベリルは少し口角を吊り上げた。

「いいですよ」

「あ、本当?」

「明日は予習時間が多く取れます」

 携帯しているタブレットを見ずに応えた。

 渡される一週間分のスケジュールをベリルは全て記憶していた。